王道と覇道
- DATE : 2013.05.02
- Cat : Sol
少し古い話になりますが、ダイエーが急速に成長したのは、お客様の利益を最大限にすることを徹底したことによります。いわゆる価格破壊。創業者・中内功氏は、戦争に従事したことで空腹のひもじさを嫌というほど味わったため、先ずは腹を一杯に満たすことの必要性を思い、そのために如何に安く提供できるのか、同時に如何に安く仕入れることができるのか、に苦心されたそう。
その後の成長に伴い、価格破壊は、腹を満たすべく食材のみならず、他の商材にも及び出します。その価格破壊とは、自社の希望売価を設定してそれに合わせた仕入れ価格で納入させるということです。
が、しかし、仕入れる側も利益が出ないことには成り立たない。
そこで松下vs.ダイエー戦争が勃発します。
松下としては、仕入先の利益の確保も念頭にあり、そのための売価設定をしているにも関わらず、売り手側であるダイエーの一方的な納入価格に合わせさせるやり方を良しとせず、ダイエーに卸すことを一切拒否します。
そこで松下幸之助と中内功の密談が行われます。
お互い一歩も譲らない中、幸之助氏が中内氏に最後に放った言、
「覇道ではなく王道を行って下さい」。
*価格破壊の結果、家電においては定価というものがなくなり、希望小売価格になります。
中内氏の初期動機としては間違ってはなかったのでしょうが、しかしながら、仕入れ先に負担を掛けつつも自らは利益を出し、それをもってホテル経営や球団買収にまで手を拡げたわけです。
薄利及び赤字でも納めなければならなかった業者の思いがいかばかりのものか、容易に想像がつきます。そのやり方を松下幸之助氏は、覇道と呼んだ。
その後のダイエーの没落は説明を要しません。王道を進んだ松下は盤石、ではありましたが、現状は覇道をすすんでるのやもしれません。
ここで学ぶべきことは、お客様と販売側は常に固定化されるというのは誤解でしかないということです。誰しもが、買い手であると同時に売り手でもあるわけです。状況によってその立場が入れ替わる。にも関わらず、買い手の利益をのみ優先させるということは、自分で自分の首を絞めることになるわけです。
低価格化に進んだ結果、失われた20年となりデフレ脱却にあくせくしているわけですから、いい加減安いものに価値があるという価値観は捨てるべきです。価値あるものを安く手に入れることには価値が生じますが、それを掘り出し物と呼ぶ以上、所詮安いものは内容も安いものでしかありません。安いものとは、そこに合理化という名の手抜きがあるもののことです。逆に言えば、安く上げるためには行程を端折る必要があり、だからこそ安くできるわけです。もちろん努力の結果、正当に安いものも存在しますが、それはそれで掘り出しものなわけです。
それを見分けることは、覇道を進んでる限りできません。王道を進むことで、その目が養われるのです。
商売上の王道とは、いわゆる三方良しということです。
自らの利益だけを追求すれば、必ず破綻をきたします。働くとは、人のために動くと書きます。また、傍(はた)を楽にすることが働くということだそうです。
追求すべきは目先の利益ではなく、自らの真実であり、そこに到達することで人の役に立ち、それこそが真の利益となるわけです。
それが真言密教のいうところの「自利利他」ということであり、そこに至る道を王道と呼ぶのだろうと思います。
SOL