現実と実現
- DATE : 2010.07.02
- Cat : chezの独り言
そんなこと言っても現実は・・・。
理想ばっかり言ってないで、現実を見ろ。
よく耳にする言葉。
はて、現実ってなに?
今、目の前にある現実。
でもそれを現実と呼ぶのなら、各人現実は違うはず。
15年近く前の記憶ではすっごく美味しかったとんかつ屋。移転してて代替わりしてて、まぁそれはそれとして、でもなんだか店構えが軽くて、アレ?と思ったのやけど、まぁとにかく味わってみようとオーダー。
待ってる間、メニューの隅々まで読み込んでみると、創業からの揚げ方のこだわり、どこどこのなにを使用、こんな思いであんなこと等々。頑張ってはるのねと思いつつ、テーブルの上を見ると、いわゆる食卓塩にどこにでもある七味。なんじゃそれ。なににこだわってはるのやろ?
理想としてはこだわりたいけど、現実的には経費削減?
友人が、尼崎から芦屋の山手に引っ越した。芦屋山手と聞こえはいいけど、山手というか山中、山奥といったほうが正しいようなところ。家に行くのに有料道路しかない。不便というよりナメてんのか?というような。
でも、山の緑と眼下に拡がる海の青を目にするとそんなことどーでもよくなった。そして趣味のいい家主による、ちゃんと家自体が呼吸してそうな、天然素材で建てられた家。
そこを借りた友人は、別に金持ちのバカ娘ではない。ただ彼女がやったことといえば、どんな暮らしがしたくて、どんな景色を眺めれて、どんな間取りが心地よくて、どこまでの家賃なら出せるのか、そしてそれに対して妥協しない、それを明確に持ったこと。
理想が実現した。
理想を現実にした。
生きていくためにはお金が必要。
確かに現実。
夏は暑くて、冬は寒い。
これも現実。
地球が1回転する期間を1日と呼ぶ。
それも現実。
その1日を24時間に割って、更にその1時間を60分で割ってその進行を表す装置が時計。
これは現実?
その時間によって給与が決まる。
現実やけど、前提が少々怪しい。
お金って人間が生み出したシステム。
地球の自転、それによる季節と伴う気候の変化は自然法則。
現実ってなに?
夏が暑いといっても所詮人間にどうこうできることではない。
エアコンガンガン効かせることは対処療法で、結果それが地球温暖化に繋がってるのだとしたら、根本的な治療が必要やということになるんじゃないかと思う。
肉体感覚では暑いと疲れるし、寒いと動けなくなる。
それはこちらの問題で、人間の力ではどうにもできないことが現実、だと思う。
それを受け入れることが、現実を受け入れるということなんだと思ってる。
でも。
どうにもできないことを受け入れ、どうにでもできることを変えていくこと。
それを言えば理想だと言われる。
どうにもできないことをどうにかしようとし、どうにでもできることを諦めること。
そうすることが現実に対して努力しているとされる。
それは単なる勘違いであって欲しい。
芦屋の山奥の新しいアトリエは凛とした佇まいで、引っ越したばかりってこととは関係なく、静けさを引き出す物の配置で、その置かれた物たちはそれぞれが美しかった。
もうかれこれ20年来の付き合いやけど、彼女が生み出すアクセサリーの質が上がっていくのと比例するかのように、彼女の生活の質も上がっていった。
人間には変えようのない自然と対立することに躍起にならず、自分の理想を実現させていくことに喜びを見出せれば、それこそ自分の身の回りの現実が、理想の世界になる、そんなことを目の当たりにさせてくれてなんだかうれしかった。
ありがとう。